平素より大変お世話になっております。
陰パです。
ここ数日、推しに対して大きな勘違いをしておりましたことを、この場を借りて深くお詫び申し上げます。
誠に申し訳ございません。
恥ずかしい。
まずこの言葉を自分の体中に貼り付けて、呪い殺してほしい。
私は推しに対して、大きな大きな勘違いをしていた。
勘違いではなく、傲慢さだと後々に気付くのだが、もうそれは身も捩れるほどの馬鹿な勘違いをしていた。
推しは今年の4月から、とあるネトゲのPR大使として、ファンの人々と共同で敵を倒したり、ギルドを作りそこでファンと交流したりする仕事をしている。
彼は元々ゲームが好きで、ゲーム実況をYouTubeに投稿していた。
おそらくその繋がりと、彼が過去そのオンゲをしていたことからPRの仕事を得たのだろう。
勘の良い方、わかるでしょうか?
陰パは数年前、ゲーム実況者(歌い手)に恋をしていました。
ガチもガチのガチガチ恋でした。
四半世紀生きてきた女の恋は、ネット上の恋愛に収束したのです。
ネット上の恋愛って良いですよね。
自分の醜い姿も相手には見えませんし。
自分の歪んだ思考もタイピング途中で純粋な言葉に書き換えられますし。
ファンですよと人畜無害な顔をしながら、あなたのことを知りたいな、と好意を漂わせる控えめかつ欲望丸出しのメッセを打てば、ただのファンから一歩本人に近づけますし。
Twitterの裏垢で繋がれば、他の女とは違うという特別感を味わえますし。
おすし。
何よりネット上の恋愛は、インスタント恋愛だと思う。
ネットでは簡単に綺麗なイメージを手にできる上に、相手が好きそうな言葉や話題を選べば、それはもう簡単に相手から選ばれる確率がグンと上がる。
だから、己の身がどれほどだらしなくても、知識とリサーチ力さえあれば、近づくことができた。
陰パのいた界隈ではな、他は知らんけど。
死にたい。
私はもうネットで恋愛をすることはやめにしようと、(今もその消えた歌い手のことが好きで好きで仕方なくてやめられないが)、現実世界に息をする男を推せる幸せを味わっていました。
残念、無理でした。
だって、推しがネットやらゲームやら生配信やら、そんな昔の傷を抉り返してきたんだもん。
馬鹿な陰パは、過去のネット上の恋愛に今の推しを重ね合わせていました。
推しの本業は俳優である。
顔も美しく、体も健やかである。
陰パと違って、価値のある人間である。
もしプライベートの彼の前に存在しても、陰パは通行人でしかない。
クラスメイトにも同僚にも、ましてや友人にもなれはしない。
気の利いた言葉をかける機会もなければ、趣味や気の合う仲間にもなれない。
ただただ、太っただらしない女でしかない。彼の人生に影響を与えることは何一つないのだ。
しかしね。
しかしだよ、ネトゲでは陰パは可愛くて強い女の子で、彼は陰パのことを守ってくれる存在なわけです。
チャットで会話できたり、一緒にダンジョンを攻略できたりと、通行人Aだったのがネット上では友人かつ仲間になれるんです。
末恐ろしい世の中だな、こうして勘違い女が生まれる。
私は推しのことを、俳優ではなく、一緒にゲームをしたりプラベでも会話出来る存在だと認識するようになっていた。
悲しいことにそれは夢であることに気付いたのは、彼の本職に触れたからであった。
彼は俳優である。
現在、深夜枠のドラマに出演しており、ファンである私も御多分に洩れずリアルタイム視聴していた。
深夜1:00からの30分、私は推しの俳優としての姿を見ていた。
演技をし、セリフを言う口を見ながら私は何が何だかわからなくなっていた。
目の前にいるのは、俳優としての推し。
ネトゲにいるのは、推しそのものだと思っていた。
違う
推しは、俳優としての仕事も、ゲームのPR大使としての仕事も、私に見せている面はどちらも俳優、山崎大輝としてだった。
いつから勘違いしていたのか。
ゲームをするらいと君は、仕事であってプライベートの彼ではないと、どうして誰も忠告してくれなかったのか。
軽率にも勘違いしてしまったじゃないと、深夜に涙が流れ出てきた。
らいと君が身近な存在だと勘違いしていた。
山崎大輝は俳優であって、私の友人ではない。
俳優である彼を前に、私はただの通行人であることを思い出す。
触れられない・好かれないを良しとし俳優としての彼を応援していたのに、いつの間にかゲームを通して他のファンよりも近くの存在だと思っていた。
それが、俳優という彼の本業を見て、やっと目が覚めた。死にたい。悔い改めよ。
俳優は俳優として、舞台上の彼を推そう。
無闇矢鱈にオンゲや生放送で、彼に近づかないようにしよう。
今回、私が起こしたミスを恥じるとともに、二度と同じミスを起こさないよう俳優として応援できているか、定期的にチェックを行うよう改善いたします。
取り急ぎ、お詫びを申し上げます。
取締役 たいきママ(陰パ)